「もう一回、今度は詳しく、気分が悪くなったときのことを話して」

「詳しく…って言われてもなぁ。バスケの試合してて、パスが来たから、『入れ!』って念じながら、ゴール狙ってボールを投げただけだもん。そしたら、急に目の前の景色がグルグル回りだして…」

「で、ボールはゴールに入ったのね? そうなんでしょう?」

「入ったけど…そこは、どうでもよくない?」

「どうでもよくないのよ。それだわ。その瞬間に、覚醒しちゃったのよ」

 はあああぁぁぁ…。お母さんは再び、深ーくため息をついた。

「あの黒猫、ツムギの使い魔になりたいのよ、きっと」

 つかいま??

「覚醒しちゃったのなら、腹を括るしかないわ。使い魔も1匹ぐらいいると、何かと便利よ。使役してあげなさい」

 私はぽかんとしちゃったんだけど、お母さんはお構いなしだった。

 今度はツカツカとドアに向かっていった。

 ガチャッ!!

 勢いよくドアを全開にした。

「入っていらっしゃい」

 お母さんは黒猫を店内へ招き入れた。