第六章 この誕生日をずっと忘れない




「ハッピバースデートゥーミー、ハッピバースデートゥーミー、ハッピバースデーディアー雪穂ー」

「自分で歌うんかい!」

七月初め、私の誕生日。
海鳳にリクエストで電子ピアノでハッピーバースデーを弾いてもらい、自分で歌う。

鍵盤を叩きながら海鳳のつっこみが入る。  海鳳の誕生日から約一ヵ月、今度は私が二十六歳の誕生日を迎えていた。

この日の為に海鳳は仕事の休みを取っていて、一泊だけど温泉旅行に行く事になった。 遠出ではないけれど、海鳳が小さな頃から家族で行っている温泉宿らしい。

お祝いをしてもらえるだけで嬉しいのに、まさか旅行に連れて行ってくれるなんて…。嬉しすぎて朝早く起きて、旅行前に海鳳にピアノを弾いてもらっていた。何気ない時間も愛しいものである。

午前中に車で出発をして、熱海に向かう。
観光をしながら夕方過ぎに温泉旅館にチェックインする事が出来た。

海鳳が小さな頃から家族で旅行に来ていたという、高級温泉旅館。 旅館というよりかはホテルに近いラグジュアリーな造りで女の子は絶対に好きな感じだ。

熱海の絶景を見渡せる部屋のつくり、ちょうど夕陽が海に落ちていて街並みが水鏡に映ってとても美しい。