第五章 サプライズ




六月は海鳳の三十四歳の誕生日だ。

誕生日当日、私は有休をわざわざ取った。  彼は朝、「今夜は十九時までには帰れると思う」と私に告げた。それは私が何度もしつこく今日は何時に帰るかと何日前から聞き続けたからだ。

勘の良い海鳳の事だ。 サプライズバースデーを用意してる事に気が付いているだろう。

「行ってらっしゃい。 十九時ね。病院から出る前に必ず帰って来るって連絡いれてね?!」

「はいはい…。一体何があるんだろーかー」

海鳳は棒読みでそういって、含み笑いを浮かべながら病院へと向かっていった。
…これじゃあ全然サプライズじゃないような気もするけど

私は今日この日の為に何ヵ月も前から用意してきた。 海鳳の三十四歳の誕生日を、今年一番素敵なものにする為に。

「まずは、飾りつけしなくっちゃ!!
いやいや、先にケーキの土台を焼いちゃう方が効率がいいか?!」