体育館から学校の校舎までからは、結構距離がある。
よく晴れた空の下、私と音怜くんは、石床の上───、体育館通路を上靴で歩いて
いた。

ふたりでたわいもない会話をしていると──。


「わっ、じれじれ王子が歩いてるよっ………!」
「でも、女子と一緒にいるけど、あの子誰?」
「知らなーい、でも仲よさそうで、羨まし~!」

………え? “じれじれ王子”って音怜くんのこと?
というか、どういう意味なんだろうっ………?

私が不思議そうに、見上げると、「なに?」と音怜くんは言った。

「さっきの女の子たち、音怜くんのこと“じれじれ王子”って呼んでたよ?
新しい………、あだ名みたいな感じ?」

「あー、それね」
音怜くんは、ちょっと面倒くさそうに、頭をかく。

「まー、お前は、一応仮の彼女だから、教えてもいっかー」
「うん、知りたい」
「あのねー、俺、基本的に無気力だし、特に恋愛とかもこの世で一番メンどいと思ってる」
「え、あーなるほど。音怜くんが考えそうなことだね」