「貧血で倒れちゃったみたいね~。川高さん体調の方はもう平気なのかしら?」
「あ……、はい」

私は、保健室の丸椅子に座らされ、同じく腰をおろす養護教諭の先生が、
抱えたバインダーの白い紙にシャーペンで記入する。


「あ、あの」
「なぁに?」


先生はにっこりと笑う。
その表情があまりにも自然で違和感がないのが、私には正直ショックだった。
先生は……、音怜くんが私を助けたのが余計だった、と確信しているみたいで。

ううん。ここは──、『みたい』、じゃなくて、『そうだ』と断言できる方が
正しい。

私は意を決して口を開いた。
「あの……、私、先生と音怜くんの会話、聞いちゃったんです」

すると、先生はびっくりして、気まずい顔をする。


「あら………、そうなの? まぁ、知られてしまったものはしょうがないわね」

パタンと、バインダーを机に置く先生は、ちょっと早口でこう言った。


「今回はちょっとした切り傷ですんだかもしれないけれど、最悪目とかにあたっていたら、とんでもないことなのよ?」