バスケ部の朝練を見終わり、私は一人で教室に向かう。
『バスケ部の話し合いがあるから』と音怜くんは、私に先に帰ってていいよと
付け足して、バイバイと手を小さく手を振った。
私はお言葉に甘えて、自分クラスに戻ることにする。
一人、連絡通路を歩いていると、あのハーフアップの女の子のことを思い出す。
あの子の、音怜くんに対する気持ちは強いんだな……、でも泣かせちゃってやっ
ぱり酷いことしたよね。
でも………、私だって音怜くんが好きっていう気持ちは負けない。
ううん、誰にも負けたくないんだ。
ごめんね、と心の中でハーフアップの女の子に謝る私。
すると、後ろから肩に手を置かれる。
「あ、理々乃ちゃ───」
私はてっきり彼女だと思い込み、振り返ったのが間違いだった。
視界に映ったのは、理々乃ちゃんではなくて、私と同じクラスの女の子が三人。
しかも、その先頭に立っていたのは、明るめのブラウンの髪が特徴の斎藤茜さん。
…………、私が今もっとも会いたくない相手だった。