バッシュの擦れる音を聞いたのは、一か月ぶりだった。
今は、バスケ部の朝練中で私はその見学者。
私は、体育館の端っこのパイプ椅子座りながら、音怜くんのドリブルする姿を
見守る。
「きゃーっ、音怜くーん!!」
「頑張ってー! かっこいいー!!」
練習試合ということもあり、見学に来ている人───、特に女子たちが目を輝かせ
ながら応援しに来ていた。
見回すと、人だかりができていて、体育館の出入り口はすべて通るのが難しそう
な状態である。
「つーぼーみー!」
私の肩をポンッと叩いて、寄って来たのは理々乃ちゃん。
「理々乃ちゃん、お疲れ様っ! 今女バスは休憩中?」
「うん、まぁね、てか、まだアイツと付き合ってるんだ?」
その返事に、私は「あっ……!」と声を漏らして困惑する。
そうだ………、理々乃ちゃんにも反対されてたんだっけ、私と音怜くんが付き合ってること。
「えと、あの、実はそうなんだ………」
なんとか声を絞り出す私だったけど、目線は逸らさなかった。