キーンコーンカーンコーン。
「では、ここまで。理解出来なかった部分はあとで聞きに来るように」
数学担当の男の先生が、そう締めくくって戸から出て行く。
わいわいとする教室で、私はひとり窓の外を眺めていた。
桜の景色は昨日と変わらない、けど、私の心は重かった。
帰宅部の、ヒマな私と違って今日から理々乃ちゃんは、女子バスケの練習が始まったのをメールで知らせてくれた。
ぼーっとしていると、ぽんっと肩を叩かれる。
振り向かなくても、私の肩をさわる癖がある人はこの世で一人だけ。
「つぼみー! なに死にそうな顔してるの?」
「あ……、リリィ」
「今日天気いいし! 外でお昼食べに行こっ!」
「えっ、あっ、うん………」
腕をがしりと掴まれて、私が理々乃ちゃんと共に向かったのは、裏庭。
日があたる場所に私たちは並んで、お弁当箱を広げる。
「つぼみ、で、どうだった?」
「あ、プレゼント? うん、可愛くて、早速部屋に飾ってるよ!」