春、私はこの季節が一番好き。
心地よい風が吹く教室の窓際、一番後ろは特等席だ、と私───、
川高つぼみは思う。
つんつんと、肩を突いたのは、城守理々乃ちゃん。
私は黒いロングストレートの髪をなびかせながら、右を向いた。
「今年も同じクラスになれたねっ! よろしくね、つぼみー!」
「うんっ、こちらこそよろしくっ! リリィ~!」
女の子同士でぎゅーっとハグをする。
『リリィ』は、私が考えた理々乃ちゃんのあだ名で、親友の印みたいなもの。
1年前、高校に進学して、初めて理々乃ちゃんと同じクラスになった。
頭が良くてスポーツ万能。
明るめの髪色のブラウンに、低めの位置で結んだツインテールが似合う美少女。
何でも出来る凄い女の子なのに、全く鼻にかけない。
それどころか、しっかり者で優しくて精神年齢は幼稚な私よりずっと上だ。
すると、理々乃ちゃんは「ちょっと待ってて」と言って、自分の席に小走りで
向かう。