イザベラはニーナが向かい側に落ち着いて座っているのを見つめた。 彼女は自分の目を信じることができなかった。

そして「ニーナ、もっと食べたほうがいいよ」とぎこちなく笑いながら言った。

ニーナはイザベラの表情に注意を向け、じっくり観察した。

彼女は心理学の訓練を受けていたので、人の心を読むコツをわかっているのだ。

ニーナはスプーンを置き、バッグからフェロモン香水を取り出しイザベラの前に置いた。

イザベラは心臓が飛び出しそうになり、顔が凍りついた。
「ニーナ、どうかしたの? なんで私があげた香水持ってきたの?」

ニーナは気づいているのかしら? イザベラはやきもきした。

「あごが下がり、口がうっすら開いている。つまり、驚いているが、それ以上に怖がっている」

イザベラの表情を読み取ると、ニーナはそっと彼女を見つめ微笑んだ。
「イザベラ、この香水が私をどんな目に遭わせたか知ってる?」

それはほとんど警告だった。 彼女の全身は少しくしゃっとして、きまり悪さに取り憑かれているようだ。

これは、イザベラが状況を打開しようとする時にいつも見せる潜在的な反応だった。

「ニーナ、なんの話? わけがわからないんだけど」
イザベラは、ニーナが事実に気づいている可能性を恐れて、彼女の目を見ることができなかった。

そして緊張を隠すように水を一口飲んだ。

「イザベラ、人間は嘘を吐くと喉が乾くのを知ってる?」
ニーナは躊躇なくすっぱ抜く。

イザベラは少しイライラして、「友達の表情は読んで分析しないって言っていなかった?」と尋ねた。

彼女の目は細められ、筋肉は緊張して眉が固まっており、 唇はすぼまって、口角にはシワがよっている。

明らかに怒っているのだ。

しかし、恥ずかしさはバレた時にだけ怒りに変わるものである。

つまり、怒っている人はたいてい自分が悪いのだ。

「イザベラ、どうして嘘つくの? 私は裏切られるのが嫌いなの、知ってるでしょう?」