ジョンは体をまっすぐにすると、きつく尋ねた。
「おい、どういうことだ?」

二年前から海外にいたのだ。 結婚なんかできるはずがない。

「二年前のことです。 サム様が、彼の命を救った女の子とあなたを結婚させたんです そのひとが、 今のあなたの奥様です。 サム様がすべて手配なさって、 婚姻届もすべてお持ちです」

ヘンリーがアシスタントになった後、サムはこの件について彼に話したのだ。 そして、ジョンが浮気をしないように見張りを頼んでいた。

実際、ジョンは最近興味を持っている女はまさに彼の妻なのだ。

それで、ヘンリーはその任務に一応成功していると言ってよい。

一方、ジョンは眉をひそめ、ぞっとするような結論に達した。 彼は歯ぎしりして、「つまりあいつは俺を財産みたいに使って取引したんだな」と言った。

ヘンリーは口を開いて説明しようとしたが言葉が出なかった。

そうは見えないかもしれないが、サムはジョンのことを第一に考えて行動していた。
彼は、息子が一生妻を見つけられないのではと心配していたので、手を尽くして花嫁を探したのだ。 そして、ニーナがこれ以上ない相手だと確信していた。 ヘンリーは死んでも、サムが言ったことをジョンに教える気はなかった。

けれども、ニーナの私生活を垣間見ることすらできなかった理由をようやく理解した。 サムが黙って何かやったに違いない。

シー家の屋敷、 スクエア通り一番地。

ジョンは車から降りるや否やサムの書斎に一目散に駆け込み、「俺が結婚しているってどういうことだ?」と尋ねた。

サムは書くのを中断した。 彼は頭を上げて気焔をあげている息子の方を見た。

「何があったんだ? 挨拶すらせずに いきなり食ってかかるとは、なんてやつだ!」

サムはあまり忍耐強い男ではない。 誰かが無礼を働こうものなら、そのままお返しするのが彼のやり方だった。