【Study8:実習9日目】


実習9日目。


「まお。決まったぞ。」



初めて朝、岡崎先生から声をかけられた。
何が決まったかがないけれど。
そんなことにイチイチ拘っていたら噛みつかれるように睨まれるに違いないから、とりあえず無反応。
まおって呼び捨てもさすがにもう慣れてきた。


「手の外科の症例患者。」

『・・・症例ですか。』

「ああ。9時に作業療法室へ来るようにお願いしておいたから。」

『わかりました。』


ようやく決まったあたしにとって2人目の症例患者さん。
どんな人だろう?


「カルテ、これだ。見ておけ。」


既にパソコン上で開かれていたカルテ画面。
岡崎先生はその画面を指さしたら、すぐにどこかへ行ってしまった。

1人目の症例患者さんの時の下柳先生の時の丁寧な説明とは真逆。
自分でカルテ情報を読み込まなくてはならない。


長谷川悠斗(はせがわゆうと)さん 22才 男性

あたしよりも1才年上の人が患者さん?!

現病歴と言われる、入院までの経過が記載されている画面を開く。


名古屋高速をバイクで走行中。合流してきた自動車と接触し転倒し
右腕神経叢損傷、右肩関節脱臼受傷
全身打撲もあったが、骨折ならびに頭部外傷は画像診断上では所見なし
脱臼は徒手下にて整復されている


『バイク事故・・・腕神経叢麻痺って・・・』


*腕神経叢麻痺
オートバイ走行中の転倒、スキーなど高速滑走のスポーツでの転倒、機械に腕が巻き込まれた後などで、上肢の痺れ、肩の挙上や肘の屈曲ができなくなったり、時には手指も全く動かなくなったりする怪我。
腕神経叢は、首の部分の脊髄から出て来る第5頚神経から第8頚神経と第1胸神経から形成されている。
肩と側頭部で着地した際、また、機械に腕を巻き込まれて腕が引き抜かれるような外力が働くと、腕神経叢が引き伸ばされて損傷する。
腕神経叢損傷を起こすと、腕や手指を支配する神経が損傷することで、上肢(腕)や手指が麻痺したり、感覚障害が起こる。
(日本整形外科学会HPより一部引用)