隣に宏貴がいる。
隣に恵理がいる。
それが当たり前のことのようになっている今。
でも二人を繋ぐ確かなものはどこにもない。

恵理は常に不安だった。

だからと言ってたとえ結婚をしたとしても所詮赤の他人。
宏貴の心が永遠に自分だけのものとは限らない。

そう思ってしまうのも、宏貴からのプロポーズにこたえられないのも、恵理の幼いころの記憶がそうさせていることは、恵理自身も気づいている。

恵理を出産した直後から体調を崩していた母。
何度も手術を繰り返し、ずっと病院に入院している母が、わずかな期間でも家に帰ってきてくれることが恵理の楽しみだった。

そんな母が入院しているとき、恵理は母方の祖父母の家に預けられていた。