「一橋さん」
「・・・」
「一橋さん？」
「・・・」
「一橋さん！」
「・・・はいっ！」

後ろから同僚に呼ばれてもなかなか振り向かないのは宏貴じゃない。

「ごめんなさい、まだ慣れてなくて」

やっと振り向いたのは恵理だった。

「俺たちもまだ慣れないよ。まさか美園と一橋が私生活でもパートナーだったとは。」
同僚からの言葉に、困ったように笑う恵理。
「お前たち、結婚式挙げないんだろ？」
「うん」
「今度仲間内だけで祝おうぜー。旦那ももちろん誘ってさ。みんなで。」
「うーん・・・」
返事に困りながら恵理が愛想笑いを続けていると
「そのうちな。今は毎日新婚気分味わってるからだめ。」
と恵理の後ろから声がした。