家、と言っても森の入口付近にあった廃屋を利用させてもらい、それをある程度生活できるような空間になるまで手を加えた単なるボロ屋。


家の外での見張りをリュードルに任せ、一人家の中へと続く扉を開ける。


悲鳴のような軋む音を立てる木の床は、まるでおかえりと迎え入れてくれているようで、私は嫌いじゃない。


何より衣食住が満たされるのならそれでいい!それで十分!と思ってしまう程。


ここに来る前は、王宮で何一つ不自由のない暮らしをさせて貰っていたけれど、王宮に入る前は冒険者である父と母と共に各国を旅していたおかげで、この生活に馴染むのにもそう時間は掛からなかった。


あの頃の旅はこんなボロ屋でも立派な家に思えてしまう程、屋根のある場所で休むことは出来なかったし、木の根元で硬い地面に寝転がって寝るなんてざらだったし。


確かに一度味わったあのフカフカのベッドとか、一流の料理人が作ったご飯は忘れたくても忘れられない。


でも現実は国外追放寸前の身、そんな生活が帰ってくるのにはかなりの時間が要するのは目に見えていた。