久我君と話せるようになっても、私の家での扱われ方は変わらなかった。

 そこを変える勇気がなかった。

 そもそも、ちゃんと私を見て、私だって頑張ってる、なんて子供みたいなこと、言えるわけがなかった。

 それが変わらないから、なんて言い訳かもしれないけど、私がやりたいことは、まだ見つかってなかった。

 久我君と話して、どれだけ時間が経っただろう。

 多分、一週間くらい。

 その程度の期間でここ数年のことを変えられるなら、誰も苦労はしていないというやつだ。

 もともと、お父さんもお母さんも、あんなに厳しい人ではなかった。

『真央はそのままでいい』

 そんな優しい言葉をかけてくれるような人たちだった。

 変わったのは、お姉ちゃんが家を出てからだ。

 あの家の子供が私だけになってから、私の不出来さに気付いてしまったのだと思う。

 ……自分で言って悲しくなるから、これ以上は辞めておこう。

「朝から重たい空気を振り撒かれたら、こっちまでテンション下がるんだけど」

 教室でため息をついていたら、登校してきたばかりの久我君に言われた。

 やめてほしいと言われて、やめられたらどれだけ楽だろう。

「久我君にはない? 嫌なことを思い出して、落ち込んでしまう、みたいな」