撫高祭が終わって、日常が戻る。


やっぱり私は、いつもの調子で非常階段に向かってしまう。

1人になりたくて逃げ込んだ場所。
今では、階段の人に会いたくて来る場所。


よく考えたら、階段の人──基、日南先輩に会う手段ってここしかないんだよね……。

連絡先知らないし、2年生のクラスに行くのには勇気がいるし。


日南先輩は目立つから目撃情報がよく耳に入ってくる。まるで全校生徒がGPSのよう。

だけど、必ず居場所がわかるとは限らない。


知りたいのにまだまだ知らないことが多すぎて、知るための手段を考えないといけない。大変だ。



重い扉を開けて──室内から外へ、風が抜ける。

スカートが乱れて、ポニーテールが揺れて。
その風は、ピンク色の髪をも揺らす。


風が通り抜けた先にいたのは、日南先輩だった。


手すりに腕を置いて、背を向けていた日南先輩。
ドアが開いたのに気づいて……。


「あ、サリーちゃん。ラッキー」


桜を咲かせるような笑顔を私に見せた。