撫高祭が始まった。


目玉のファッションショーは数回にかけて行われ、投票の末、後夜祭でグランプリが発表される。

ファッション部は1日中ショーに追われるので、クラスの出し物に参加できないどころか、学園祭を見て回ることもできない。

大変なのは重々承知だったけど……実際やってみると、本当に大変。



「あ、サリーちゃん!」

「……?」


渡り廊下を歩幅を大きくして歩いていた時──名前を呼ばれた。


サリーちゃん──なんて1人しか呼ばない。

振り向くと、中庭の方から歩いて来る日南先輩がこちらに手を振っていた。


目の前で立ち止まり、はにかむ日南先輩。


「こんにちは……」

「ファッション部の仕事?」

「あ、はい」


私が抱えるように持つダンボールをまじまじと見てくる。中には、ちょっとした備品なんかが入っていて重い。