……やっぱり、流されちゃダメだと思うの。


 朝、ギンの腕の中で目覚めたわたしは思う。

 流されて、キスを受け入れて……まあ、そこまではいい。


 ただ、そのまま同じベッドで寝入ってしまったのはいただけない。

 そのせいでもう起きなきゃいけないのに、ギンの腕から抜け出せないという事態に(おちい)っているんだから。


「ぅぬぬぬ……」

 何とか抜け出そうと(こころ)みるも、惨敗。

 さらにわたしを抱く腕の力が強まるだけだった。


「はぁ……」

 いっそこのままギリギリまで寝てしまおうか、何て考えが頭をよぎる。

 でもすぐに振り払った。


 いやいやそれはダメ!

 今日も学校なんだから。

 朝食の準備だけじゃなく今日はお弁当もちゃんと用意しなきゃ!

 わたしだけじゃなく眞白のも用意しなきゃならないんだから。


 自分で決めたことはちゃんと守らなきゃ。


 そう思ってもう一度抜け出そうと試みる。

「んー! もう! いっそ起きてよ、ギン!」

 なかなか外れない腕を叩いて叫ぶ。

「……キスしたら起きてやってもいいけど?」

「え!?」


 返ってくるとは思わなかった声に驚いた。

 その声は寝起きの気だるさはあったけれど、起きたばかりのかすれはない。

「ちょっと、まさか起きてたの!?」