「あ、起きた?」

 うっすら瞼を上げたところで聞き慣れた声が掛けられる。

 見ると、義弟の眞白(ましろ)がベッドで寝ているわたしを見下ろしていた。


 ここ、保健室?

 眞白、ついててくれたのかな?


 眞白は義父さんの連れ子で、年はわたしの1つ下。

 ふわふわした茶髪で、クリッとした焦げ茶の目が可愛いなと出会ったときから思っていた。

 今は身長も追い越されてしまって男らしさが増したけれど、やっぱり可愛いという印象は変わらない。


 そんな可愛い義弟の顔だけれど、意識を失う前に見た美しすぎる顔とのギャップに目をパチクリさせてしまう。


 ……あれ? もしかして夢だったとか?

 なんて思ったけれど。


「義姉さん? 大丈夫? 時計塔で倒れたって聞いたけど……何であんなところ行ったのさ?」

 眞白の言葉に、夢ではなかったんだと知る。


 それもそうだ。

 だって、わたしを抱く腕。見下ろす瞳。唇の感触に、苦しいキス。

 全てをまだ体が覚えているもの。


 思い出してドキドキしてきたわたしの顔を眞白が更に顔を近づけて見下ろす。

「義姉さん、ホント大丈夫? 何かあった?」

「なっ! 何もないよっ!」

 明らかに何かあったと言わんばかりの様子にジトーッとした目になる眞白だったけれど、重要性もないと取ったのか追及はしてこなかった。