あらたの香りと、あらたが戻ってきた、あたしの部屋。



引かれたカーテンを通して淡く光るのは、優しい夕焼けのオレンジ。



「…あんず…」



あたしの名前が呟かれた、そのくちびるが愛おしく感じる相手のものだなんて。



きっと、世界中を探したってこれ以上に嬉しいことは無い気がする。



あたしの名前だけを囁いて欲しいよ…。



言いたくても、決して言えない言葉。



こうして、目の前にあらたが居たって、不安で不安で仕方がない。



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