稲荷は踏み切りの手前で足を止めて、植木に身を隠した。


良介も同じようにして植木の裏に回って身をかがめた。


肩が稲荷と触れ合ってまだドキッとしてしまう。


良介は少しだけ体をずらして、稲荷から距離をとった。


それでもぬくもりが伝わってきて、なんだか落ち着かない気分だ。


「顔が赤いけど、大丈夫?」


「だ、大丈夫だよ」


 良介はそう言って自分の頬に触れた。


いつもより少し熱くなっている体温。


こんなことでドキドキしている場合ではないと、心の中で自分を叱咤した。


熱くなった頬を軽くつねって、植木の向こうの道路を見つめる。


今から自分と英也と大輝の3人が来ると思うと心臓が早鐘を打ち始める。


これからどんなことが起こるのか。


うまく自分を助けることができるのか。


不安が胸の中に渦巻いていくのを感じて唾を飲み込んだ。


自分を助けることができるのは、自分だけだ。


もう1度自分にそう言い聞かせて、気合を入れなおした。


「どうして踏み切りだと思う?」


稲荷に聞かれて良介は首をかしげた。


「え?」