「自分を助けるって言われても、具体的にはどうすればいい?」


その質問に稲荷は困ったように眉を寄せた。


「できれば安全に、ケガのないように助けてほしい。でも、たぶん無理」


こっちの小学校まで案内すると言って隣を歩いていた稲荷の言葉に良介はギョッと目を見開いた。


「ケガってなに? そんなに危険なことなの?」


「それは、まだなんとも言えないんだけど」


稲荷はモゴモゴと口ごもり、ハッキリしない。


ハッキリと安全だと断定できないことなんだろう。
 

途端に不安になってきて良介は周囲を見回した。


あの丘から移動して、今はビルからビルとつないでいる空中歩道の上を歩いている。


腰の高さまである手すりがついているから安心だけれど、少し間違えればまっさかさま。


それも、地面が見えなくくらいの高さをだ。


良介はゴクリと唾を飲み込んで、手すりから離れ、歩道の中央を歩き始めた。


「まさか、ここから落ちるようなことなんて、起こらないよね?」


「まさか! そんなことは起こらないよ」