「戻ったら連絡くれ、真剣に今後のこと話したい」

「ごめんね、私、好きな人いるから秀とはやり直す気持ちはない」

「亜紀」

「じゃあ、もう行くね」

私は秀に別れを告げてその場を後にした。

その頃、理樹さんは既にニューヨークに居た。

二人で過ごしたニューヨーク。

亜紀と訪れた場所を一つ一つ訪ねた。

あの日、俺ははじめて亜紀を見た時、亡くなった彼女が生き返ったのかと錯覚に陥った。

癌で五年前にこの世を去った彼女、阿部真央。
あまりにも早い寿命に神も仏もないのかと呪った。

彼女の最後の言葉で、なんとか俺は五年間生きてきた。

『私の分も生きてね、絶対に生き返って理樹の目の前に現れるから、ちゃんと見つけてね』

亜紀を見た瞬間、真央が生き返ったのかと思った。

すぐに抱きしめてプロポーズをした。

でも、亜紀と過ごしたニューヨークでの日々で、真央の面影は少しずつ消えていった。

真央じゃない、俺は亜紀に惚れたんだと……

それから、亜紀との一緒の時間はどんどん奪われて行く。