これは、ツヤ・シノノメの脳内に残されている一番最初の記憶である。



お腹が空いた。目を覚ました直後、そう思った。ありえないほどの空腹に胃液を吐きそうになり、食べ物を求めて歩き出す。人、人が喰いたい。頭の中にはそれしかなかった。

あたしがいるのは、名前の知らない、見覚えのない森の中。同じような木々が周りにはあり、自分がどこにいるのかわからない。

あたしの名前はツヤ・シノノメ。でも、それ以外は何もわからない。どうして森の中で倒れていた?どうやって森まで来た?どうしてこんなにも傷だらけなんだ?わからないことだらけだ。ただ、腹を満たしたいとだけ思っていた。

喰う人間はそうだな……あまり太り過ぎておらず、噛みごたえのある筋肉のついた奴がいい。体が大きければ大きいほど、あたしの腹は満たされる。考えただけでよだれが止まらなかった。

そして数日森を彷徨い、ついに人間の姿を見つけることができた。剣を持ち、鎧を身に付けた屈強そうな男だ。その隣には彼の妻と思われる鎧を身に付けた女がいる。どちらもうまそうだ。

あたしはよだれを垂らしながら、一気に木の陰から飛び出す。突然のことに二人は驚いていた。