この世界に妖が存在していて、自分たち一般市民を護る存在があったということを知った数日後、イヅナは着替えなどを詰めたキャリーケースを手に列車に乗り込んでいた。目的はアレス騎士団の入団試験を受けるためである。

「しっかし、まさか部屋に急に馬が出てきて入団試験の日時や場所を書いた手紙を置いてくとは思わなかったぜ」

イヅナの前でレオナードが苦笑し、少しクシャッとなった手紙を出す。試験を受けると決めたイヅナ、そしてレオナードとヴィンセントの元には動物が手紙を届けてくれたのだ。

「私のところには狼が来たわ」

「僕のところにはうさぎが来たよ」

手紙を取り出すヴィンセントと、それを見つめるレオナードを見て、イヅナは胸が締め付けられるような感覚を覚える。助けてくれた人たちに対してお礼ではなく酷いことを言い、試験を受けることを選んだ自分に何故二人はついてくるのか、幼なじみという立場だからなのか、イヅナはわからず二人を見つめる。すると二人は顔を上げ、イヅナに向かって微笑んだ。