「あっ、うわっ……」



ガッシャーーンッ!!!


ぐらっと傾いた花瓶が絵に描いたように床に落ちて。

飛び散った水、割れた破片は水よりも散らばった。



「こ、こんな花瓶に飾られちゃってる花を助けたのわたしは…!」



花だけを助けて逃げる。

広い広いゴージャスな校舎を全力疾走して、人目のない場所へ。



「誰ですかまた花瓶を割ったのは……!!柊 エマですね!?いい加減にしなさい破壊神……!!」



うわぁぁぁバレてるっ!!

そりゃこんなことも日常茶飯事なんだから当たり前だけど、破壊神(はかいしん)って……。


高校に入学して早いことで4ヶ月。

まさか夏休みが明けてからの初日で花瓶を割ってしまうとは。



「こんなところにいたんですかエマお嬢様……!探しました、」


「樋口(ひぐち)!」


「なにをなさってるんですか?理事長はかなりお怒りですよ」


「お花、そのまま捨てるわけにはいかないからこうして花壇に戻してあげてるのっ」



しゃがんだ私、柊 エマ(ひいらぎ えま)の先を覗き込んでくるひとりの執事は7人目だった。