「、…」
俯いて、机の中のコーヒー牛乳をぎゅっとした。
もうぬるくなっているこれは、きっと飲んでも美味しくない。
きっとこんなのあげても迷惑。
だってぬるい。
だってきっと、疲れているから冷たいのが飲みたい。
色んないい訳が頭を巡る。
渡さなくていいように、逃げる口実がいっぱい浮かぶ。
フワリくんと私にある壁は、いつまで経っても埋まらない。
私が動かない限り。
私のせいで、いつまで経っても変わらない。
「…、っ……ちょ、っと……トイレ行ってきます!」
「んー、ごゆっくりー」
コーヒー牛乳を握って、廊下に出たフワリくんを追いかけた。
大丈夫、私にだってきっとある。
勇気は、
きっとある……
「あっ、大ちゃんせんぱぁぁぁい」
フワリくんの背中に駆け寄ろうとしたとき、前から来たあの子が、フワリくんに先に駆け寄った。
谷ぽんの友達の、あの子……
「お疲れ様ですっ、これ、コーヒー牛乳、よかったら飲んでくださぁい。好きですよね?それ」
「うん。」
私の中のコーヒー牛乳は、もうぬるい。
きっとあの子が渡したものは、冷たくて美味しい…
勇気は、
いつもよりちょっとだけ出た。
だけど、
フワリくんには、届かなかった……