【 番外編① 堤美和の恋愛事情 】

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「堤さんって、本当に澤村と付き合ってないの?」


 大学一年の春に澤村 虹磨という人物と出会ってからというもの、同級生や先輩たちから、私は何度この質問を受けたかわからない。


「ほんとになにもないです。神に誓います」


 はっきりと否定しても大概誤解される。常に一緒にいるわけでもないのに。

 それはなぜかと真剣に考えた結果、私と彼は“信頼”で繋がっているから、という答えにたどり着いた。

 単純に“ウマが合う”というのとも少し違う。互いに恋愛感情は微塵もない。だけど、困ったときは無条件で助け合うのだろうと確信している。
 それは家族に似たような感覚で、私たちはそんな仲だ。

 だいたい、虹磨さんがイケメンなのが悪い。それを売りにしたくないとか言いつつ、足の長い体形を活かしてモデルのバイトなんかやっているし、意味不明だ。

 モデル活動をしていたら芸能人の友達が出来たらしい。
 鳥飼 大和という年下のミュージシャンだと聞いたけれど。

 誰よそれ、と首をかしげるほど、当時はまだ大和は無名だった。