最終的に言うと、椿とのデートはとても楽しかった。

終始彼は優しかったし、あまりにもエスコートが完璧だから「彼女できたらこんな風にデートするの?」って聞いてみたら、「さあ?」って笑われた。



椿の好きなブランドショップに立ち寄って、言われていた通りに彼の服を選んであげたけど、すごく気に入ったみたいで買ってたし。

ほかにも色々見て回って、約束してたレモネードのショップも行った。



一通りフロアを歩き尽くして、時刻も丁度いい。

そろそろ帰ろうかとモールを出て駅に向かい、電車に乗っている途中で。



「あ、雨降ってきた」



「……ちょっと帰るの遅かったな」



「そうね。

でもわたし折り畳み傘なら持ってるわよ」



残念ながら、傘はそんなに大きくないけど。

ふたりで相合傘なんてしたら肩くらいは濡れちゃうだろうけど、直接濡れるよりはマシだと思う。




「じゃあ、傘入れてもらおうかな。

……あ、傘で思い出した。珠紀に彼女できたんだよ」



「え、自分の利益になる時にしか動かないあの珠紀が……?」



「……俺らに対してそういうこと言えんの、

ぜったい『花舞ゆ』内外でお前だけだよな」



だって本当に珠紀ってそういう性格なんだもの。

彼になにかお願いするときは、大体彼の利益になるものを提示しないと引き受けてくれない。……稀に機嫌のいい時は引き受けてくれるけど。



「結構溺愛しててさ。

この間も、雨降ったからって迎えに行ってた」



「へえ……」



「ほかのヤツは彼女とかいないけど。

……あ、お前昔芹に告られてフッたの?」