恋愛の形は、人それぞれで、様々で。

けれどわたしの場合、恋に期待する感情が長続きしないことを知るのがあまりにも早かったのだと思う。決して、倦怠期でも冷めたわけでもない。



この恋に未来は、いらないのだと。

ただ、そう思うようになっただけで。



「、」



目を覚ましてすぐに広がる光景は、いつものわたしの部屋。

違うことといえば今日は背後にぬくもりがあることくらいで、起こさないようにしながら静かにベッドを抜け出す。



クローゼットから取り出した、まっさらのカッターシャツ。

それを羽織りながらクローゼットの内側にある鏡にうつったわたしの首筋には、赤黒い痕跡がはっきりと残っていた。



ここなら……ギリギリ、隠れそう?



2年ほど前なら独占の証であるそれに、ちょっと嬉しくなったりもしたけれど。今はもう、すっかり慣れてしまった。

白いベッドの中で起きる気配の無い茶髪を、鏡越しに見る。




彼がここに来るときは決まって大学の講義や予定に余裕のある日だから、わざわざ起こしたりもしない。

シャツのボタンを閉め終え、スカートを履いて。ニーハイを履こうとベッドに浅く腰掛け、軽く屈む。



……と、背後からまわされる腕。

パーマのかかったやわらかい髪が首に触れて、くすぐったい。



「……起きたの?」



「はなびが抜け出した時から、起きてたよ」



「最初からじゃない、それ」



この時間に起きるなんて、めずらしい。

いつもわたしが学校行くときには、ぐっすり寝てるくせに。……べつに怒ってなんかないけど。



「高校生って大変だな。

こんな時間に起きて学校行くなんて」