同性婚が日本で認められて早三年、会社員の白銀美砂(しろがねみさ)は、本屋で買った結婚情報誌を手に家へと急ぐ。その胸は高鳴り、頬は緩んでしまっていた。

「ただいま〜!」

美砂が家の中に入ると、ふわりとお味噌汁のいい匂いが鼻腔に入り込む。そしてリビングから「おかえり」と背が高く、長い髪を揺らした女性が姿を見せる。

「えへへ、お腹空いちゃった〜」

「今日もお仕事ご苦労様でした」

そんな話をしながら、自然と二人は抱き締め合う。しばらく互いの体温を確かめ合い、顔を上げた瞬間に二人の唇は重なった。

美砂とキスをしているのは、キャビンアテンダントとして働く恋人の鶴巻藍(つるまきあい)だ。二人は幼なじみで同性愛者。マンションを借りて、お互い大学を卒業してからずっと同棲している。

会社員とキャビンアテンダントという、仕事の忙しさも、内容も、何もかもが違う職種の二人だが、幼い頃からずっと一緒にいるためか、お互いのことをよく知っているため、ぶつかることは少ない。