あの後わたしは一睡も出来ないまま翌朝を迎え
燈冴くんはというと
熱は一向に下がる気配もなく
合流した父と相談した結果
視察は終了、強制帰還となった。

戻ってきてから再度病院を受診。
発熱の原因は恐らく怪我と体の冷えが影響。
たぶん、免疫が下がっていながら無理をしたせいだと思う。
燈冴くんはずっとわたしの事ばかりを気に掛けていたから…

「私の不注意からこのような事態になり
 職務にも支障をきたし
 様々な面でご迷惑をお掛けしてしている事に
 誠に申し訳ございません」

朝食中の父とわたしの前で深々と頭を下げ
しっかりとした口調で何度も謝罪を口にする燈冴くん。

発熱は落ち着いたとは言え
まだ腕は三角巾で吊られていて
痛々しく見えるのは変わらない。

「燈冴くん、頭を上げてくれ。
 君のせいではない。
 謝らないといけないのはこちらの方だ。
 娘から聞いたが助けてもらったようじゃないか。危ない目に合わせてしまい、すまなかった」

「そ、そんなッ!
 社長に頭を下げられてしまったら
 それこそ私は…ッ」

「本当に申し訳なかった」

父の謝罪に燈冴くんは慌てて止めようとした。

厳しい父が頭を下げるなんて珍しいこと。
それくらい彼が特別な存在だって
こういうとき痛感させられ
わたし自身も追い目を感じる。