一夜を共にしたわたし達だったけど
翌朝目が覚めたときには隣に燈冴くんの姿はなく
彼はいつものようにキッチンで朝ご飯の準備をしていた。

「おはようございます、緋奈星さま」

爽やかすぎる笑顔が眩しく感じながらも
昨晩は愛されてたな…なんて昨日の情事を思い返して
朝から顔がニヤけてしまう。

「お体は大丈夫ですか?」

「そ、それはッ」

わたしの気持ちを知ってか知らずか
いたずらに微笑む燈冴くんは絶対わかってて言うものだから、まともに顔なんて見られなくなる。

それなのに燈冴くんは今朝も通常運転の”お仕事モード”

「明日は社長が退院されて帰ってきます。
 これで鮎沢社長も勝手な事が出来なくなりますし
 今後の話し合いも進みそうですね」

この切り替えは燈冴くんらしいけど…。

何事もなかったような普段通りの朝を過ごし
身支度を終えたわたしは燈冴くんの車に乗り込んだ。

「仕事中に昨晩の事を思い出してはいけませんよ?」
 
「えッ!?」

不意打ちだった。

運転中の燈冴くんがルームミラー越しにニコりと笑うから
せっかくドキドキが落ち着いたのに思い出すし
そのせいで顔が一気に熱くなる。

こういうところ
本当に意地悪だ…

車内の2人きりに終始緊張しながら会社に到着。