「行っちゃった……」


 古傷が痛むまで頑張ったのに、ガッカリだよ。

 信号が青になっても放心状態。

 チカチカと点滅し始めた信号を見て、私は慌てて横断歩道を渡る。


 バス停は目の前だけど、疲れてグッタリ。

 痛めた足を少し引きずる感じで歩き進み、目的のバス停に到着した。


「かよい慣れた道だけど、いつもより遠く感じたよ……」


 バス停のすぐ横に、雨風を凌げるスペースがある。

 横長のベンチ椅子は、大人が三人ほど座れる大きさ。

 少し茶色な半透明のアクリル版に被われ、外から中は見づらい感じ。

 車道に面した部分は大きく開いてて、すぐバスに乗り込める作りになってる。


 本当は、早くこの場所に到着して、雨風を横目にしながら帰りのバスを待つ予定だったのに……

 びしょ濡れまではいかなかったけど、制服は濡れてシットリしてる。


「次のバスがくるまで、待つしかないわね……」


 ひとり言を呟きながら、横長のベンチ椅子に腰をおろした瞬間。



 激しい音と同時に、大きな雨粒が落ちてきた……