「とりあえず走れぇぇ~!」


 歩道のアスファルトを力強く蹴り出し、スタートダッシュ。

 中学生の時に鍛えた陸上部の走りは伊達じゃないよ!

 力強い走りは、今でも健在なはず!


 ……だった。


 気持ちだけは……


 腰まで長い髪の毛先、短いスカート丈。

 胸元まで開いた半袖ブラウスに、着崩した制服。

 私はすっかり、陸上選手とは無縁な女子高生になっていた。


「夕立なんてキライだぁ~!」


 無意味に叫びながら、私は走る。


 鞄を持つ手に力を込めてるけど、あまり重たくない。

 中身は勉強と関係のない物ばかりだけど、とりあえず必要。


 びしょ濡れになるか、ずぶ濡れになるか、しっとり濡れるかの瀬戸際なのにっ!


「私は何を考えてるの~!」


 自分に怒ってもしかたない、今は全力で走れ!

 全力で……走れ……



 が、無理な足だって忘れてた……