夜の8時30分。

引っ越しの荷物を送っていたら、すっかり家を出るのが遅くなってしまった。



「ねえーやばくない?“QUEEN”の空席とか聞いたことないんだけど!」



最寄り駅に降り立って、改札をくぐると、そんな声が耳に飛び込んできた。



クイーン?  空席?

って、いったいなに……?



気になって視線を上げると、私のななめ前を女の子4人組が体を寄せ合って話していて。

……なにやら、かなり盛り上がっている様子。




「でも席が埋まってないってことは、うちらにもまだ可能性あるよねっ」

「いや~ムリでしょ。今の“KING”のウワサ聞いてる限りはさぁ」


「冷酷無慈悲。特に女子相手には、にこりともしないんだっけ?」

「でもそのほうが逆に燃えるよねー」



そう楽しそうに笑いながら、私と同じ方向へ夜道を駆けていく。