「ダビデからの御礼状だったわ」

 メイドが用意してくれたお茶はジョージの言う通り、最高級品の深い味わいがした。
 ケーキはいつものシェフの手作りではあるものの、このお茶なら数倍の美味しさに変化する。

 この子爵邸の主はカークス様だ。
 なのに執事のジョージは、私の知る限り一度も出した事がない。 味音痴なカークス様ではないのだから、味も美味しさもわかるはずなのに。

 とっておきと言うくらいだから、もしかしたら私の為にとっておいてくれたのかもしれない。

 応接間のソファーに座る私の斜め前で、ジョージの姿勢は真っ直ぐ。
 ドア近くなので、いつでも立ち上がって対処できるように座り方も浅い。

 本来なら邸の人間と使用人がこのような図式はない。 それが例え、昔から仕える執事であったとしても。

 ジョージは弁えた人間だ。
 神妙な顔で、側で控えております、と辞退しようとした。
 それを私があえて無理矢理に座らせたのだ。 お茶に付き合え、と言ったのだ。

「ジョージに丁寧に礼を伝えてくれるようにと書いてあったわ」

「頑張っているようですね」