「……どこまで、追いかけてくるんだ!!」

カバンを肩にかけた、ショートカットのターコイズグリーンの髪に黄緑色の瞳をした、男子高校生の格好をした彼女――五十嵐 風音(いがらし かざね)は、人型をした黒い怪物から逃げるように走る。

「……いっ」

怪物が飛ばした黒い刃が、風音の腕を掠めた。風音は、痛みに顔を顰めながら必死に走る。

気が付けば、風音は近くの森の中にいた。風音は、近くの木の根に足を引っ掛けて転んでしまう。

(いった……傷が……って、今はそんなこと思ってる場合じゃ……!)

風音は体を起こしながら、後ろを向いた。怪物は、鋭い爪を風音に向かって振り下ろす。

それを風音は避けると、走り始めた。走り疲れたせいかよろめいてしまい、風音は足を滑らせると小さな崖に落ちてしまう。

風音の意識は、ここで途切れた。



「騒がしいな……」

淡い緑の髪を1本にまとめた緑目の男性は、袴を揺らしながら扇子を片手に森を歩く。

「……こんな所に、悪霊がいる。おや?何をお探しかな?」

風音を襲っていた怪物――悪霊の様子を見た男性は、そう呟くと扇子を開いた。

男性は風を起こし、悪霊を吹き飛ばす。そして、風の刃で悪霊を斬りつけて倒すと、男性は扇子を閉じる。