〇

 もぞもぞと動く気配がする。

「ん……」

 なんだかくすぐったくて、声が()れてしまう。

 でもその動くものは暖かくて、あたしはそのぬくもりが欲しくてすり寄った。


 少し前までは暑かったのに、もうすっかり寒くなってしまったから。

 だから、寝起きなこともあってその暖かいものに頬を押し付けた。


 それがあたしの体をぎゅうっと締め付けるまで、それが何かなんて考えてなかったんだ。


「っはぁ……美夜、朝から可愛いな」

 耐え切れないというような声が聞えて、流石にあたしは覚醒した。


「っあ……ひろ、くん!?」

 顔を上げると、至近距離に陽呂くんの甘い笑顔。

 陽呂くんも寝起きだからなのか、少し目がとろんとしている。


 それがまたカッコかわいくて状況を忘れて見惚れてしまった。

 ポーっとしているとその顔が近付いて来てチュッと唇を奪われる。

「っあ、陽呂くん!?」

「無防備にしてる美夜が悪い」

 と、少し意地悪そうに眼を細めた。


「うぅ……もう、目が覚めたなら起きよう」

 照れ隠しもあって、離れるためにそう言ったのに陽呂くんは離してくれるどころか抱きしめてくる。

「えっと……離して?」

 より直接的に言ったのに、やっぱり陽呂くんは離してくれない。