.*◇
目が覚めたとき、私は白い空間が広がっていて何がなんだかわからなかった。
『美空ちゃん、分かる?』
『だ、だれ……?』
気づいたら、白の服を着た男の人がひとりに女の人がいた。
『ここは、病院よ。私は、佐倉と言います。ここの先生よ』
『さ、くら先生……?』
『そう。美空ちゃんは、交通事故に遭ったの』
交通事故……に遭った。
その瞬間、私の頭の中にはトラックが突っ込んでくる映像が流れ出した。ブレーキ音と共に衝撃音が響いて、頭の中が真っ暗になる。
『お母さんとお父さんは!? 無事なんですよね?』
『お母さんとお父さんは、即死だった』
……そく、し?
『……死んじゃった、ってこと……?』
それからのことは覚えていない。
病院の人がいろんな手続きをしてくれて、葬儀は親戚の人がお金もだしてくれた。
大好きなお母さんとお父さんが死んじゃったのに、私の目から涙は出なかった。
――それが中学3年の冬。中学を卒業して、すぐの頃だった。