麗音の演奏はこれで終わるはずだったが麗音は礼をしてから再び鍵盤に手を乗せた。
「おい。2曲目だけじゃなかったか?」
僕の隣にいた智が僕に耳打ちをしてきた。
「僕もそう思ってたんだけど…」
考える暇もなく3曲目を弾き始めた。
弾き始めたこの曲がなんかのバンドの曲という訳では無いのはすぐにわかった。
僕にはなんの曲か全く分からなかったが上手なことに変わりはなかった。
おそらくサビの部分にさしかかると麗音は声をだして歌い出した。あの僕が惚れた綺麗な声。
麗音の声と麗音の奏でるピアノの音以外の全ての音がこの世界から無くなった。
ああ、僕は麗音を好きになってよかった。
瞬時に河川敷で出会ったあの日からの麗音との思い出がフラッシュバックした。