■ 第4話

    ◇ ◇ ◇

 聖女光臨の儀の会場はチェキーナ大聖堂だ。そこまでの送りはイラリオさんがやってくださることになっている。

「おはよう、気分はどうだ?」

 迎えに来たイラリオさんは私の顔を見ると、にこりと微笑む。
 黒い髪がさらりと額にかかっており、合間から鋭さのある目元が見える。相変わらず、とても整った容姿をした人だ。

「とてもいいです」
「それはよかった。緊張している?」
「はい、ちょっとだけ。でも、家族が会いに来てくれたのでだいぶ解れました」
「家族?」

 イラリオさんは不思議そうに首を傾げる。
 家族とは黒猫のイリスのことだ。
 けれど、そんなことを言う必要もないかと思って私はにこりと微笑み返した。