■ 第2話

 そこから先は、てんやわんやの大騒ぎだった。

 あの七色の光はセローナ地区の至る所から見えたようで、一体何が起ったのかとあらゆる人から聞かれた。そこに名乗り出たのが、エリーを医療院に送り届けた直後に迎えに行き、今さっき戻ってきたばかりのルイーナだ。

「実はわたくし、あのときは皆様の無事を願って祈りを捧げていたのです」

 ルイーナはとても言いづらそうな素振りをしながら、おずおずと申し出る。
 それを聞いた誰もが驚いた。

「なんと! では、あれは聖女様の祈りが神に通じて──」
「さすがは聖女様です」

 ひとり、またひとりと、その場にいた多くの人間が驚きと賞賛の声を上げ始める。そして、わずか数分後にはあの光はルイーナの祈りによるものだと誰もが信じ込むような状態になっていた。
 捧げていたのは自分が早く帰りたいという祈りじゃないのかとも思ったが、大人げないのでそこは黙っていよう。

 俺は祝賀ムードに包まれた大通りに背を向け、セローナ大聖堂の医療院へと向かう。先ほど預けたアリエッタの様子を見に行くためだ。

 意識を取り戻したアリエッタは、あのときのことを覚えていないのか一切その話をしようとしなかった。それどころか、俺に突き放されることを恐怖しているかのような、不安そうな顔をする。