■ 第1章 聖女候補のはずが、絶体絶命の大ピンチです

■ 第1話


 チクタクと時を刻む時計の音が、異様に大きく聞こえる。

(どうしよう、どうしよう……。早くしないと)

 落ち着け、落ち着くのよ。

 必死に自分に言い聞かせるけれど、ますます焦って手元が震える。私はその手をぎゅっと握りしめて、必死に震えを抑え込む。

 土カエルのエキス、マンドレイクの根、月光花に溜まった朝露、黄金蜂の集めた蜂蜜……。
 これまでの薬師としての経験と知識から、考えに考えて決めた材料だ。いくらか震えが治まってきた手で、それらをすり鉢の中へと入れてゆく。

「あっ!」

 手が滑り、一部が床へとこぼれ落ちる。

「もったいない」

 材料はあと少ししか残っていないのに。
 試行錯誤できるのも残り数回だろう。慌ててしゃがむと、床に散らばった魔法薬の材料を拾い集める。