夏休みが終わった。九月一日。二学期の始業式だ。
体は鉛みたいに重たくて、心機一転、新しい生活をスタートさせることを、体も心も拒否している。

一日一日、呼吸を繰り返すことも、当たり前に朝を迎えてしまうことも苦痛で仕方がなかった。

あと一ヶ月、一週間、せめてあと一日休ませてほしい、そしたらそれで気持ちの整理をするからと親に相談してみたけれど、聞き入れられなかった。

親が冷たいからじゃない。生きている俺は、俺がするべきことを全うする義務がある。俺が人一倍塞ぎ込むことで、その姿勢はカンナの両親にも反映してしまうと。
カンナの為にも、カンナの両親の為にも、俺が前に進む勇気を持つ必要があると、父さんと母さんに諭された。

いつもカンナがつばきにしていたみたいに。

父さんと母さんが言うことは理解出来る。何も間違っていないと思う。

だったら俺は何に救いを求めればいいのか。
カンナの最期の姿にも会えなかった俺はどうやってカンナの死を理解すればいいのか。
頑張って頑張って、周りの悲しみを解消してあげたところで、俺は何に希望を見出せばいいのか。

もう何も分からない。
夏休み前の様に、ただ日々を漠然と生きて、いつかこの町を、カンナとの思い出も面影も全部捨てて、誰も知らない場所に行く。それだけを救いに生きていけばいいのか。

履き慣れた靴が窮屈に感じる。歩き慣れた道がどこまでも続いているみたいにやたらに長く感じて、それだけで気が滅入ってしまいそうだった。

一時間に一本のバス。一生やって来なければいいのに。
どこに行ったって、カンナには会えない。

九月最初の一日目。雨が降っている。
雨が降っているからなのか、九月になったから気温設定もうまいことできているのか知らないけれど、まだ半袖の制服では少し肌寒い。

バスが停留所に向かって走ってくるのが見えた。
飛び込んでしまいたいと思った。
強く、強く。