「じゃ、じゃあ、あたしが勝ったら?」

 そう聞くと、凶暴性は驚くほどスッと引っ込みしかたなさそうな笑みが浮かぶ。

「そのときは、大人しく月に一度の逢瀬(おうせ)で我慢してやるよ」

「……それってどちらにしろ会えるってことなんじゃあ……?」

「いつでも会えるのと月に一度しか会えないのじゃあずいぶん違うだろ?」

「それは、まあ……」


 そりゃあ、出来るならあたしも会いたいけれど……。

 でも、やっぱり怖い気持ちもある。

 もし紅夜のところに行く前に他の誰かに掴まったら?


 昨日のことは、しっかりと恐怖として刻み込まれていた。


「俺はこの街から出れないからな。お前が来てくれないと会えない」

「え?」

 管理者と言うからにはこの街で何かしらの仕事をしているとは思っていたけれど、出れないとまで言うのはどうしてだろう?

 紅夜は、街から出たことがあるのかな?


「どうして出れないの? 紅夜は、いつからこの街にいるの?」

「どうしてかはまだ言えない。でもいつから、か……」

 紅夜は少し考えてから、感情の読めない目で告げた。


「生まれた時から……かな?」