朝。学校の昇降口で新條の姿を見かけ、律は勇気を出して挨拶した。

「お、おはようっ」
「おはようございます、先輩」

 気付くと、上履きに履き替えている生徒たちの視線が自分と新條に集中していた。
 女子は律を一瞥し、口々にこう呟く。

「ああ、なんだ、例のダンス係の……」「ダンスが上手い人ね……」

 昨日の中庭での出来事があったからか、律のことが広まっているようだ。律は新條とペアだというのに、女子たちの瞳はすぐ安堵の色に変わる。

 今もこれからも決して新條と恋愛関係にはならない相手。そう瞬時に判断されているのがわかる。

 こんな見た目じゃしょうがないか……。新條と付き合いたいとか、そんなつもりは全くないから、そう思ってくれて構わない。嫉妬されてないようで一安心だよ。律はそう思った。