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 その日の放課後、律は四階会議室のドアの前にいた。これからここで、ダンス会議が行われる。

 ダンス係をしたくなったから来た訳ではない。進路希望調査が書けないのだ。

 ――私はこれから先ずっと、一般人として生きていくつもりでいる。だけど……、いくら考えても将来したいことが何も浮かんでこなかったんだ。

 律は、重いドアを開ける。
 そこには、ダンス係と思われる学年もクラスもバラバラな三十人弱の生徒達がいた。

 ダンスは全学年合同。
 その中で圧倒的存在感を放っていたのは。

 赤のハイライトが入った髪の男子。
 肩までつくくらいの長さのヘアスタイル。
 鼻筋の通った綺麗な横顔がこちらを向いた。
 男らしさを感じるくっきりとした目が律を捉える。

 新條だ。

「ぬぁっ……」

 ――何でいるのッ?

 気が動転し、律は口から変な声を漏らした。

 当の本人は近くにいる男子達にすぐ視線を戻し、得意げに喋っている。