「…あ」
その日の夜、窓に寄りかかってボーッと外を眺めていると、アパートの裏の暗がりに、一つの影が動いたのが見えた。
その影はふらふらと蠢いて、やがて倒れた。
「……、あー…」
気付きたくなかったけど、あれ人だな。
怪我でもしてるんだろうか、倒れたってことは結構大変な状況だろうな、怪我ならまだしも、持病か何かで倒れたなら危険だ。
「…行くか」
ただの不良の喧嘩なら助けない。下手したら獅貴の件と二の舞だ。
ちゃんとした一般人ならすぐに助けよう。罪なき人間を見殺しには出来ない。
そんなことを考えて、その人影に近付いたはいいものの。
これは、どうするのが正解なんだろう。
「……ふむ」
結果から言えば、判別が難しいところだった。
全身に怪我を負っているその人は、怪我の具合から見て何かの喧嘩に巻き込まれたのは間違いない。
殴られたような痣、一瞬『虐待』『いじめ』の文字が頭を過ぎったが、手の甲に自らが殴ったような傷もあるから、やられっぱなしだったとは思えない。